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にしむらたずこ

Author:にしむらたずこ
医療ライター 兼 医学英語講師
プレミアム医学英語教育事務所代表 http://www.premium-english.biz/

仕事や暮らしの中で思ったことを書き留めています。

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■since 2007/01/18
HPVワクチンに関する新聞報道について考える
 毎週火曜日午後は、特に用事がなければ、東大医学図書館にて新聞データベースを使って検索作業をしています。ふだんは、ディオバン事件に関する新聞報道を調べていますが、昨日はHPVワクチンについて調べてみました。朝日、読売、毎日の新聞データベースに検索語「HPVワクチン OR 子宮頸がんワクチン」を入力し、2009~2016年まで、本文か見出しに含まれた記事を調べたところ、朝日368件、読売308件、毎日255件でした。2011年は、地方自治体でのワクチン無償接種に関する記事がほとんどでしたが、2013年にHPVワクチン接種によるとみられる健康被害の記事が激増していました。

 2014年以降も健康被害の事例や訴訟関連の記事が多数を占めていましたが、WHOのワクチン安全性諮問委員会が日本の対応を批判した記事をリアルタイムで載せていたのは毎日新聞だけでした (2015年12月24日 267字)。WHOは日本の状況について、「薄弱な根拠によって有益なワクチンを使わないことは、実質的な損害につながる」と警告しています。朝日新聞は、同じ年の9月の夕刊社会面に「子宮頸がんワクチン接種後の症状、免疫異常で脳に障害か 学会で発表」という記事を載せています(808字)。日本神経免疫学会学術集会での静岡てんかん・神経医療センター副院長の発表を紹介したものです。

 日本の学術集会での発表というのは、論文化されていない場合が多く、研究の質が必ずしも担保されていません。一方、WHOは、世界各国のデータや論文を集積し、それらのメタアナリシスも行っています。日本の1つの学術集会での発表を多くの字数を使って報道しておいて、WHOの見解について報道しないのは、バランスに欠けているのではないかと思いました。 

<6月8日追記>
6月18日から7月2日までデンマークとスウェーデンに行くのですが、うち1日は、スウェーデンのウプサラにあるWHOの関連施設、WHO-UMCを訪ねる予定です。医薬品等のモニタリングを行い、安全性向上のための情報収集・発信を行っている施設です。下記のHPVワクチンに関する論文を執筆したRebecca E. Chandler先生にもお話を伺えることになりました。東大のK先生に感謝!
Current Safety Concerns with Human Papillomavirus Vaccine: A Cluster Analysis of Reports in VigiBase®
Drug Safety January 2017, Volume 40, Issue 1, pp 81–90

 この論文は、VigibaseというWHOのデータベースにある報告例について、従来とは異なる方法で分析し(クラスター分析)、有害事象の傾向を明らかにしようとしています。結果としては、日本やデンマーク等で報告されているような重症例と似たケースが、54のクラスター中4つの小クラスターで確認され(694例)、この4つのクラスターの中で最も多い有害事象は、頭痛、めまい、倦怠感、失神だったと述べています。「HPVワクチンとこれらの有害事象の関連は明らかではないが、ワクチンプログラムと規制当局に対する一般大衆の信頼が保たれるためにも、より徹底した調査が必要だ」と結んでいました。

 UMCの日本人スタッフにいただいた同施設のチラシには「医薬品関連の問題を特定し患者の安全性を向上」「薬物相互作用の早期発見に不可欠な情報を提供」「信頼できる知識と標準化データを提供」などとあります。WHOの見解も報道しない大新聞を批判したところで誰も聞く耳を持ってくれそうにないですが、HPVワクチンの安全性の報道をするなら、こういう施設からの情報なり論文を紹介するほうが、ずっと信頼できると思いました。

<6月15日追記>
A Report of the CSIS Global Health Policy Center MAY 2014
The HPV Vaccination in Japan  Issues and Options

A Report of the CSIS Global Health Policy Center APRIL 2015
HPV Vaccination in Japan The Continuing Debate and Global Impacts
(翻訳版) 日本におけるHPVワクチン接種状況 続く議論と世界的な影響

(P7) In Japan, the absence of an effective media watchdog and relatively lax libel laws mean that newspapers, news programs, social networks, and victim support groups can freely publish—with little if any accountability —unverified stories and videos of girls who claim to suffer from adverse events following HPV vaccination.
(P7) 日本には 効果的なマスコミ監視団体が存在せず、また名誉棄損法がそれほど厳格ではないため、新聞、ニュース番組、ソーシャルネットワーク、被害者支援団体は、ほとんど責任説明を問われることなく、未確認の話やHPVワクチ ン接種後に 有害事象を患ったと主張する女児のビデオを自由に公表できる。


保健 | 18:31:51

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