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にしむらたずこ

Author:にしむらたずこ
医療ライター 兼 医学英語講師
プレミアム医学英語教育事務所代表 http://www.premium-english.biz/

仕事や暮らしの中で思ったことを書き留めています。

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ライターはつらいよ  医療データベースを使った研究の現状
 週末に更新しようと思ってましたが、地元の自治会の仕事(代表幹事という名の下働き)と原稿書き、家事もろもろでブログまでたどりつきませんでした。ようやく原稿を提出できたので、先週のメディカルライター協会の講演会の話を。

 16日(火)午後は、東大弥生講堂で開かれたメディカルライター協会の講演会を聞きにいきました。テーマは「データベースによる医療技術評価」ということで、医薬品・医療機器の製造販売後の調査と研究方法についての議論が行われていました。医薬品の承認申請に関連し、ランダム化比較試験(RCT) の研究方法はよく知られていますが、近年は、RCTに加えて、データベースや患者登録を活用した 観察研究が行われるようになっています。

 RCTでは、組み入れ基準に合わない患者は除外されるので、例えば、併存疾患の多い患者や腎機能障害のある患者、妊婦などは対象外になることが多いです。しかし、臨床現場(リアルワールド)では、それらの患者さんにも、たくさんの投与例があるはずです。そこで、使用実績を記録するデータベースがあれば、リアルワールドのデータを入手することができるし、それらを研究に使えば、より実情を反映した結果が得られるでしょう。

 最近は日本でも、DPCデータなどの基盤整備を積極的に進めていることがわかりました。特に製造販売後のデータは、安全性の検討ができるので、登壇した先生方は、このような調査・研究基盤が整うことの意義を強調していました。日本での研究事例の発表もありましたが、基盤構築ができはじめたところなので、具体的な研究については、海外に比べて周回遅れの感があります。私がNMOの論文紹介記事で書くような一流誌に掲載されるレベルの観察研究が量産されるのは、まだまだ先の話だろうなと思いました。

 たまたま先ほどまで書いていた記事は、カナダの健康保険データベースを用いたコホート内症例対照研究でした。記事が公開されたら再度紹介しますが、複数のデータベースに登録されている医療情報、外来処方情報、入院情報、死亡情報などを、個人識別番号(いわゆるマイナンバー)で串刺しして、リサーチクエスチョンを立てて、後ろ向き(retrospective)に検討していく研究デザインでした。コホート内症例対照研究は、症例と対照の患者特性を揃えるという意味では、観察研究でありながら、ランダム化に近い形で患者を群分けして検討できる利点があります。

 従来の研究では通説になっていたことでも、データベースを使って、リアルワールドの患者を対象とした研究では覆される例も出てくることでしょう。実際、カナダの研究は、非弁膜症性心房細動患者における脳梗塞の発症の性差について、標準的な補正を行った分析と、より精緻な分析を行った分析の2通りを試みたところ、後者では通説と異なる結果が出ていました。

 講演会での話題が、自分がいま担当している論文とも関係していたという意味では、とてもタイムリーでした。そして、改めてわかったことは、私たちライターが要約する英語論文のうち、データベースを使った観察研究の方法論は、日本で行われる研究のかなり先を走っているということです。そうすると日本語で情報を集めようとしても、適当なのがなかなか見つからないのは当然に思えてきます。でも、字面だけで訳すと意味不明の文章になるし、「私にはできません」と仕事を投げるわけにもいかないので、「研究者に近いレベルで内容を理解しよう!」という姿勢で臨むしかありません。
 ライターはつらいよ、、、実は大変な仕事をしているんだなあと思いました。


メディカル翻訳・ライティング | 15:43:34

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