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にしむらたずこ

Author:にしむらたずこ
医療ライター 兼 医学英語講師
プレミアム医学英語教育事務所代表 http://www.premium-english.biz/

仕事や暮らしの中で思ったことを書き留めています。

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■since 2007/01/18
睡眠時間を削って働いているのは誰?
  昨年冬頃から、保健指導情報サイトq-station のインタビューの仕事で、働き方、健康経営、メンタルヘルスなどに関わる研究者や実務者の話を聞く機会がますます増えてきました。現在、働き方改革ということで、国会や政府でもいろいろ議論されているようですが、実際に日本人はどれくらい働いているのか、他国と比較してどうなのか、日本人の働き方は効率的、健康的と言えるのか、定量的・定性的にきちんと検証した上で、政策に落とし込んでいく必要があると思います。

 早稲田大学の経済学者・黒田祥子先生らは、1週間の時間の使い方の日米比較の研究をしています。週当たりの総労働時間(労働時間、通勤時間、家事時間、育児時間)と余暇時間(睡眠時間を含む)について、日米のフルタイム労働者を対象に調べたところ、家事労働も含めると、日本人女性の総労働時間は、日本人男性や米国人男女に比べてかなり長いそうです。日本人の女性は、労働時間が長い分、何を削って生きているかというと、圧倒的に少ないのは睡眠時間ということでした(週50.4時間)。フルタイムで働く日本人女性は、睡眠時間を削って頑張ってるんですね。

 もうひとつ、黒田先生から伺った興味深い話に、労働時間とメンタルヘルスの関係がありました。労働時間が週50時間以上になると、メンタルヘルスの悪化する人が急激に増えるそうです。週50時間とは、週40時間労働で残業が週10時間ということです。週50時間を境にして、残業時間が増えるほどメンタルが悪化するとすれば、経営者側にとっても、従業員の残業時間を過度に増やすことは、生産性向上のマイナス要因になるということです。

 生産性と健康の関係については、医療費だけでなく、プレゼンティーイズムを検討する必要がありそうです。プレゼンティーイズムとは、出勤していても、業務遂行能力や生産性が低下している状態を指します。「病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、自分のパフォーマンスは何%か」という形でデータをとります。

 東京大学政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニットの尾形裕也先生らの研究では、2014年のプレゼンティーイズム損失コストの平均は1人当たり56万円を超えるそうです。

 生産性低下の理由は、大きなケガや病気のほかに、腰痛や慢性疲労、メンタルの問題、生活習慣病なども含まれるので、個人によってさまざまですが、保険者が持っている標準報酬額と標準賞与のデータを使ってコスト計算しています。例えば、プレゼンティーイズムで 1パーセントの損失と言ったら、働いている200数十日のうちの1パーセントの損失ということになります。

 出勤していても、健康に問題があるゆえに、十分なパフォーマンスができないことによる損失コストは、年間一人当たり56万円というのは、決して低い金額ではないですよね。つまり、働く人が健康であること、長時間労働を減らすことは、働く人本人にとっても、経営側にとっても益に繋がるのです。 q-stationの会員は、企業に勤める保健師や看護師が多いのですが、こういうデータをきちんと提示して、従業員の健康管理を語れる医療職が増えてほしいと思います。


保健 | 19:17:37

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