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研究目的が多岐にわたる論文の要約は難しい

循環器専門の米ジャーナル JACC誌に掲載された臨床研究論文の紹介記事が、本日公開されました。

J Am Coll Cardiol誌から
ブルガダ症候群若年患者、不整脈再発のリスク因子は?
ブルガダ症候群の若年患者を対象にした過去最大規模の観察研究
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201904/560704.html

ブルガダ症候群の若年患者の疫学調査に加え、致死性の不整脈イベントの再発リスクを検討しています。研究目的が多岐にわたる論文は、少ない字数で要約するのが難しいです。この論文の場合(以下、記事から引用)、

研究目的は、 (1)20歳以下で、不整脈イベント歴のあるブルガダ症候群患者について、心電図ならびに臨床的・電気生理学的・遺伝的特徴を調べる、(2)対象患者を小児群(12歳以下)と青年群(13歳から20歳)に分けて特徴を比較する、(3)初発の不整脈イベント後の管理と経過、および不整脈イベント再発の予測因子について評価する――とした。

目的を書いたら、それに対応する結果と結論も書かないと、読み手は消化不良になってしまいますよね。まあ記事を読んで、内容に興味をもった方は、原著にあたっていただければ、紹介記事の役目は果たしたことになると思いますが… この論文については、フルテキストのダウンロードは有料のようです。
http://www.onlinejacc.org/content/73/14/1756

翻訳は簡単ではない

 この数ヶ月、認知症関連の臨床試験論文(介入研究)の全文和訳と、英国人が執筆した看護系の大学院教育に関する論説文の和訳に断続的に取り組んでいますが、どちらのほうが英文法の知識を要し、日本語表現が難しいかというと圧倒的に後者です。アカデミアと実践活動(看護の仕事)をどうつなぐかみたいな議論をしているのですが、一文が長く文脈依存で、andが複数出てくると、どこがどこにかかるか一読では理解できないことがあります。

 臨床試験、その中でも治験など薬事申請のルールに基づき作成されるドキュメントの翻訳は、近い将来、AI翻訳が幅をきかせる可能性が高いと思いますが、臨床試験の範疇にない臨床研究、特に質的研究とか看護系の研究については、機械翻訳の導入はまだしばらく無理でしょう。翻訳しながら思っていることですが、いままで和訳された看護系の文献は、訳者がその分野の専門家であっても、きちんと英文法を理解していない場合、かなりの誤訳が含まれている可能性がありそうです。

 EBM(Evidence Based Medicine)に対して NBM(Narative Based Medicine)という言葉がありますが、ナラティブベースト-物語や対話に基づく―というのは、話や語りの文脈を理解しないといけないので、日本語であっても表現や解釈が難しいことがあります。英語話者のナラティブを、社会文化背景の異なる日本人が日本語で理解するというのは、たとえ誤訳のない文書を通してであっても、かなり難しいことではないかと思います。 

 それでも、療養中や退院後の患者さんやご家族の生活を支えるにあたり、看護の視点はとても大事だし、日本の看護系大学には看護師や看護研究者の育成を担う役割があるので、海外のいいところを取り入れつつ、研究や実践活動を発展させてほしいと思います。そしてまた、日本の看護のよいところを海外に発信していけることを願っています。

リウマチ薬で心不全による入院を予防?

25日に日経メディカルオンラインで公開された論文紹介記事です。

Circulation誌から
カナキヌマブは心不全による入院を予防するか
CANTOS試験の心不全関連データ詳細分析

「リウマチ性疾患治療で承認されているインターロイキン(IL)-1β阻害剤カナキヌマブは、高感度CRP高値の心筋梗塞(MI)既往例において、血管イベント再発を予防する」という仮説を立てて、それを検証したのがCANTOS試験。その試験データのうち、心不全関係の項目について詳細に分析して報告したのが、本論文のようです。心不全による入院、ならびに心不全による入院と心不全関連死の複合が主な評価項目です。

リウマチのお薬が心不全予防に使えるかもしれない― 臨床医がそう思いつき、良かれと思ってそのまま患者さんに使ってしまったら、法に触れます。きちんと「仮説」を立てて、その仮説を検証するための臨床試験を実施して、結果を出して、FDAなりPMDAに認めてもらうための様々な手続きを経て、はじめて処方できるんですよね。本研究については、用量依存性のリスク低下傾向は認められましたが、各用量群ではプラセボ群と比較して有意な結果は得られませんでした。結論を読むと、著者らも「IL-1を標的とした治療が心不全において何らかの役割を担う可能性」という表現にとどまっているので、研究はスタートラインに立ったばかりということでしょう。

経口抗凝固薬に関する リアルワールドの登録研究

2月末に3泊4日で台湾に行ってきました。下記は、その間に日経メディカルオンラインで公開された論文紹介記事ですが、シェア数が多いようなので紹介しておきます。国内の経口抗凝固薬(DOAC)の使用状況を調べたレジストリ研究です。

Circ J誌から
DOACの不適正用量は大出血を増加させるのか
経口抗凝固薬に関する登録研究 SAKURA Registry より

【本文より】 わが国では、非弁膜症性 AF患者における脳卒中発症抑制として、DOACが広く使われているが、リアルワールドの登録研究では、投与量を不適正に減量するケースがあることが明らかになっている。医師達は、適正使用基準の知識を有するものの、出血リスクを減らすために投与量を減らしていると見られるが、DOACの不適正使用は、理論的には脳卒中や大出血のリスクを増大させるので問題がある。そこで、日本人AF患者を対象とした多施設登録研究SAKURA AF Registryは、これまでにもDOACの有効性と安全性を検討する研究結果を発表してきたが、本論文では、DOACの不適正使用が実臨床にもたらす影響を検討した。

英語論文の読み方講習会

 昨日火曜日、獨協医科大学図書館にて、『英語論文の読み方講習会』の講師をしてきました。昨年11月に同じテーマで行った講習会が好評だったとのことで、再度依頼を受けました。読み方講習会とありますが、実際は、読み方だけでなく、論文を書いたり、英語で学会発表する際に役立つ情報を色々提供しました。昨年冬に都内で実施した『英語で学会発表☆集中セミナー』のエッセンスや、REAL-CAD試験の研究デザインや論文紹介記事の話などを盛り込み、眠くならないように演習もところどころに入れたので、夕方5時からの開始で皆さんお疲れの時間帯だったと思いますが、寝ている人はほとんどいなかったように見受けました。

 今回の参加者は30人ほどでした。前回と併せると50人ほどが受講してくださったことになります。大学院医学研究科 基本医科学講義として、受講により単位取得ができるとのことで、若手の医師が多かったようですが、看護学部や薬学部も含めて、学部生も数人入っていたようです。また、教授やセンター長級の先生方もいらして、一番前の席に座っておられたので、最初はちょっと緊張しました(笑) オンライン英会話で同じフィリピン女性講師からレッスンを受けている先生にも初めてお目にかかり、色々お話しできたのも嬉しかったです。

 それから3日の日曜日には、国際医療福祉大学赤坂キャンパスにて、私自身の博士論文(医療福祉ジャーナリズム分野)の発表会がありました。発表10分、質疑5分となっていたので、きちんと10分にまとめようと思い、日本語での発表ではめずらしく読み上げ原稿を準備しました。さらに、うちでリハーサルを何度も行って、文字数を加減したり、話すスピードを確認しました。読み上げ原稿をつくると棒読みになりがちなのですが、情報を過不足なく入れ込むには有用だと思います。あとはアナウンサーのように抑揚をつけて、よどみなく話す練習を重ねることですね。BBCなど欧米のレポーターは、現場からの報告について事前に100回近く練習すると聞いたことがあります。そこまでやる必要はないと思いますが、スライドを作って終わり、ではダメだと思います。

 私は、英語講習会も臨床研究支援の1つだと考えています。なので、私自身も研究活動をして、学会発表や論文作成のプロセスを体験することで、臨床研究を行う医療者の方により実践的な情報が提供できればいいなと思っています。
プロフィール

にしむらたずこ

Author:にしむらたずこ
医療ライター 兼 医学英語講師
プレミアム医学英語教育事務所代表 http://www.premium-english.biz/

仕事や暮らしの中で思ったことを書き留めています。

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