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「ついつい・・・」「たくなる!」

 9日(日)は、北欧から帰国後初の1日セミナー参加。午後イチで「ついつい」眠くなってもおかしくない時間帯なのに、「ついつい」続きを聞き「たくなる」、とても面白い講演でした😊 その演者は、元NHK『ためしてガッテン』演出担当デスクの北折一さん。18年続いた同番組の構成における”黄金レシピ”を教えてくれました。
  究極の目標(唯一&最大の武器)は、「ついつい」。
「ついつい見たくなる」番組をつくるべく、すごいエネルギーを費やしてたんですね。

今日の参加者の多くは特定保健指導を担う保健師でしたが、この「ついつい」の応用範囲は、かなり広いと思います。
  「ついつい聞きたくなる」講義
  「ついつい参加したくなる」イベントの企画
”やらされ感”満載じゃ誰もついてきませんよね。「ついつい」の裏にプロの技あり。緻密に計算された北折さんの講演、いつもながらとっても勉強になりました。

ついつい  たくなる

HPVワクチンに関する新聞報道について考える

 毎週火曜日午後は、特に用事がなければ、東大医学図書館にて新聞データベースを使って検索作業をしています。ふだんは、ディオバン事件に関する新聞報道を調べていますが、昨日はHPVワクチンについて調べてみました。朝日、読売、毎日の新聞データベースに検索語「HPVワクチン OR 子宮頸がんワクチン」を入力し、2009~2016年まで、本文か見出しに含まれた記事を調べたところ、朝日368件、読売308件、毎日255件でした。2011年は、地方自治体でのワクチン無償接種に関する記事がほとんどでしたが、2013年にHPVワクチン接種によるとみられる健康被害の記事が激増していました。

 2014年以降も健康被害の事例や訴訟関連の記事が多数を占めていましたが、WHOのワクチン安全性諮問委員会が日本の対応を批判した記事をリアルタイムで載せていたのは毎日新聞だけでした (2015年12月24日 267字)。WHOは日本の状況について、「薄弱な根拠によって有益なワクチンを使わないことは、実質的な損害につながる」と警告しています。朝日新聞は、同じ年の9月の夕刊社会面に「子宮頸がんワクチン接種後の症状、免疫異常で脳に障害か 学会で発表」という記事を載せています(808字)。日本神経免疫学会学術集会での静岡てんかん・神経医療センター副院長の発表を紹介したものです。

 日本の学術集会での発表というのは、論文化されていない場合が多く、研究の質が必ずしも担保されていません。一方、WHOは、世界各国のデータや論文を集積し、それらのメタアナリシスも行っています。日本の1つの学術集会での発表を多くの字数を使って報道しておいて、WHOの見解について報道しないのは、バランスに欠けているのではないかと思いました。 

<6月8日追記>
6月18日から7月2日までデンマークとスウェーデンに行くのですが、うち1日は、スウェーデンのウプサラにあるWHOの関連施設、WHO-UMCを訪ねる予定です。医薬品等のモニタリングを行い、安全性向上のための情報収集・発信を行っている施設です。下記のHPVワクチンに関する論文を執筆したRebecca E. Chandler先生にもお話を伺えることになりました。東大のK先生に感謝!
Current Safety Concerns with Human Papillomavirus Vaccine: A Cluster Analysis of Reports in VigiBase®
Drug Safety January 2017, Volume 40, Issue 1, pp 81–90

 この論文は、VigibaseというWHOのデータベースにある報告例について、従来とは異なる方法で分析し(クラスター分析)、有害事象の傾向を明らかにしようとしています。結果としては、日本やデンマーク等で報告されているような重症例と似たケースが、54のクラスター中4つの小クラスターで確認され(694例)、この4つのクラスターの中で最も多い有害事象は、頭痛、めまい、倦怠感、失神だったと述べています。「HPVワクチンとこれらの有害事象の関連は明らかではないが、ワクチンプログラムと規制当局に対する一般大衆の信頼が保たれるためにも、より徹底した調査が必要だ」と結んでいました。

 UMCの日本人スタッフにいただいた同施設のチラシには「医薬品関連の問題を特定し患者の安全性を向上」「薬物相互作用の早期発見に不可欠な情報を提供」「信頼できる知識と標準化データを提供」などとあります。WHOの見解も報道しない大新聞を批判したところで誰も聞く耳を持ってくれそうにないですが、HPVワクチンの安全性の報道をするなら、こういう施設からの情報なり論文を紹介するほうが、ずっと信頼できると思いました。

<6月15日追記>
A Report of the CSIS Global Health Policy Center MAY 2014
The HPV Vaccination in Japan  Issues and Options

A Report of the CSIS Global Health Policy Center APRIL 2015
HPV Vaccination in Japan The Continuing Debate and Global Impacts
(翻訳版) 日本におけるHPVワクチン接種状況 続く議論と世界的な影響

(P7) In Japan, the absence of an effective media watchdog and relatively lax libel laws mean that newspapers, news programs, social networks, and victim support groups can freely publish—with little if any accountability —unverified stories and videos of girls who claim to suffer from adverse events following HPV vaccination.
(P7) 日本には 効果的なマスコミ監視団体が存在せず、また名誉棄損法がそれほど厳格ではないため、新聞、ニュース番組、ソーシャルネットワーク、被害者支援団体は、ほとんど責任説明を問われることなく、未確認の話やHPVワクチ ン接種後に 有害事象を患ったと主張する女児のビデオを自由に公表できる。

睡眠時間を削って働いているのは誰?

  昨年冬頃から、保健指導情報サイトq-station のインタビューの仕事で、働き方、健康経営、メンタルヘルスなどに関わる研究者や実務者の話を聞く機会がますます増えてきました。現在、働き方改革ということで、国会や政府でもいろいろ議論されているようですが、実際に日本人はどれくらい働いているのか、他国と比較してどうなのか、日本人の働き方は効率的、健康的と言えるのか、定量的・定性的にきちんと検証した上で、政策に落とし込んでいく必要があると思います。

 早稲田大学の経済学者・黒田祥子先生らは、1週間の時間の使い方の日米比較の研究をしています。週当たりの総労働時間(労働時間、通勤時間、家事時間、育児時間)と余暇時間(睡眠時間を含む)について、日米のフルタイム労働者を対象に調べたところ、家事労働も含めると、日本人女性の総労働時間は、日本人男性や米国人男女に比べてかなり長いそうです。日本人の女性は、労働時間が長い分、何を削って生きているかというと、圧倒的に少ないのは睡眠時間ということでした(週50.4時間)。フルタイムで働く日本人女性は、睡眠時間を削って頑張ってるんですね。

 もうひとつ、黒田先生から伺った興味深い話に、労働時間とメンタルヘルスの関係がありました。労働時間が週50時間以上になると、メンタルヘルスの悪化する人が急激に増えるそうです。週50時間とは、週40時間労働で残業が週10時間ということです。週50時間を境にして、残業時間が増えるほどメンタルが悪化するとすれば、経営者側にとっても、従業員の残業時間を過度に増やすことは、生産性向上のマイナス要因になるということです。

 生産性と健康の関係については、医療費だけでなく、プレゼンティーイズムを検討する必要がありそうです。プレゼンティーイズムとは、出勤していても、業務遂行能力や生産性が低下している状態を指します。「病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、自分のパフォーマンスは何%か」という形でデータをとります。

 東京大学政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニットの尾形裕也先生らの研究では、2014年のプレゼンティーイズム損失コストの平均は1人当たり56万円を超えるそうです。

 生産性低下の理由は、大きなケガや病気のほかに、腰痛や慢性疲労、メンタルの問題、生活習慣病なども含まれるので、個人によってさまざまですが、保険者が持っている標準報酬額と標準賞与のデータを使ってコスト計算しています。例えば、プレゼンティーイズムで 1パーセントの損失と言ったら、働いている200数十日のうちの1パーセントの損失ということになります。

 出勤していても、健康に問題があるゆえに、十分なパフォーマンスができないことによる損失コストは、年間一人当たり56万円というのは、決して低い金額ではないですよね。つまり、働く人が健康であること、長時間労働を減らすことは、働く人本人にとっても、経営側にとっても益に繋がるのです。 q-stationの会員は、企業に勤める保健師や看護師が多いのですが、こういうデータをきちんと提示して、従業員の健康管理を語れる医療職が増えてほしいと思います。

病院地域連携で心不全患者の再入院を減らす

 連休前にまとめた論文紹介記事が、日経メディカルオンラインで本日公開されました。

 心不全による入院患者が、退院後まもなく再入院するケースが多いので、米国の地域病院11施設が協力し、外来受診の充実や情報共有を図る連携プログラムを実施して、その結果を報告した論文です。プログラムの詳細は論文からはわかりませんが、主要著者がMPHやDNPなので、ナース主導で進められたのかもしれません。外来受診というのは、当該病院だけでなく、地域のクリニックやNP等も含まれると思います。

 プログラム参加病院と不参加病院を比較したところ、参加病院の再入院率(退院後1カ月以内)とメディケア支払金額が有意に減少していたとのこと。日本でも退院支援に力を入れはじめた施設は多いと思いますが、入院から外来ケアへの円滑な移行は重要課題ですね。

JACC Heart Failure
病院地域連携で心不全患者の再入院を減らす
See You in 7 ―退院後7日以内の外来受診で再発予防
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201509/543898.html

「専門職を活用した戦略的な健康経営の推進」セミナー

昨日(20日)午後、取材のため「専門職を活用した戦略的な健康経営の推進」セミナー@御茶ノ水ソラシティホール に参加しました。特定健診・特定保健指導も、実施から数年たって、そろそろ成果が見えてきたようで、データに基づく健康づくりに取り組む大手企業も出始め、それを支援する国の動きもあるようです。セミナーには、企業人事、健保組合、保健師、管理栄養士、看護師など企業・団体従業員の健康づくりに関わる方々が多数参加していました。

「健康経営」というのは、米国の経営コンサルタント・ロバートローゼンが提唱した概念で、従業員を企業に不可欠な資本と捉え、従業員の健康に配慮する経営手法のことですが、ここ数年、日本の産業保健関係者の間でにわかに注目される言葉になりました。

また、ここでの「専門職」とは、産業保健の現場で働くスタッフをさします。保健指導の現場を担う保健師や管理栄養士、看護師と、企業の事務職がどのように連携していけばよいかについて、行政、産業医、企業、政策提言の各立場からの発表がありました。

発表の中に、「プレゼンティーイズム(presenteeism)」という耳慣れない言葉がありましたが、働く人の健康と生産性を考える上では重要だと思いました。労働の文脈では、present(プレセント)は出勤、absent(アブセント)は欠勤です。

健康関連コストの構造との関係で、プレゼンティーイズムの意味するところは、『従業員の医療費や、長期や短期の障害による欠勤等でかかるコストよりも、出勤していても健康状態が不良なために、能力が十分発揮できていない、労働生産性が落ちていることによるコストの方がずっと大きい』ということで、米国商工会議所が作成した円グラフが紹介されていました。

それと関連して、産業医の発表では、メンタルヘルスの問題が、2008年以降、リーマンショックをはじめ様々な社会背景も重なって表面化していて、労働生産性の向上の面からも重要な課題である、との指摘がありました。健康保険組合関係者からも、生活習慣病に加えて、メンタルヘルスの対応に追われているとの報告がありました。

保健指導にメンタルヘルス- 昔から産業保健の実務をやってきた人には、全然目新しくない課題ですが、経営サイドから関心を持たれることで、この分野にお金や人材が投入され、専門職の育成や企業内での立場が確立していけば、企業にとっても専門職にとっても得るものが大きいと思いました。

…上記は単なる感想ですが、配布資料を見ながら頭を整理して、セミナーの様子を記事に仕上げていくつもりです
プロフィール

にしむらたずこ

Author:にしむらたずこ
医療ライター 兼 医学英語講師 東京大学大学院工学系研究科 特任研究員
プレミアム医学英語教育事務所代表 https://www.premium-english.biz/

仕事や暮らしの中で思ったことを書き留めています。

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