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組み入れ基準は「既報」にあり、本文に載っていない論文

2日に公開された海外臨床研究論文の紹介記事です。

Circulation誌から
重度大動脈弁狭窄症の高齢患者、TAVRとSAVRで有意差なし
手術低リスク者対象のNOTION試験、5年間追跡の結果

大動脈弁狭窄症は、心臓弁膜症の中でも最も多い疾患といわれ、人口高齢化に伴い日本でも患者数が増えています。これは、デンマークとスウェーデンの3施設で実施された医師主導型・非盲検のランダム化比較試験で術後5年間追跡した結果の報告です。自己拡張型大動脈弁(CoreValve)を用いたTAVR(経カテーテル的大動脈弁置換術)とSAVR(外科的大動脈弁置換術)の臨床アウトカムを比較しています。

以前にも書いたかもしれませんが、5年目の経過報告となると、「研究デザインは既報に載っている」と文献番号を示すだけで、本文に詳述されていません。もちろん論文の書き方のお作法としては、これでよいと思いますが、この記事を読んだ臨床医が過去の文献まで調べることなく、この記事を読むだけで概要がわかるためには、組み入れ基準くらいは記事に入れるほうよいと思いました。そこで、Clinical.govの当該試験(NCT01057173)のサイトを参照して、中盤あたりにあるInclusion Criteriaを要約しました。

記事の最後は、次のように結びました。
「TAVRによる治療の適応拡大を進める前にさらに長期の追跡や大規模試験を行い、本結果を裏付けし、永久ペーシングの影響を検討する必要がある、と著者は結論付けている。」

終活ガイドのセミナー

 水曜日、かねてより看護系の友人に勧められていた 『終活ガイド』 のセミナー受講しました。参加者は40代50代が多く、職業は葬儀屋、有料老人ホーム事務職、介護職員、不動産屋、主婦と様々でした。僧侶が参加することもあるとか。受講費5千円。簡単なテストに合格すれば、「終活ガイド」と名刺に書けるそうです。私は書かないけど😅

 3時間の講義は、医療と介護、老人ホーム入居基準、身元保証、保険、相続、葬儀、お墓(供養)とテーマが多岐にわたったので、それぞれについて十分に情報を得られたわけではありませんが、ひとりの死によって残された家族は膨大な手続きをしなければならないことは、よくわかりました。エンディングノートをもらったので、近いうちに書いておこうと思います。

学術関係の活動

 5月は中欧旅行、京都・松山旅行で10日も自宅にいませんでしたが、今月は一変。活動範囲は自宅周辺がほとんどで、東京に出かけたのもほんの数回です。個人事業者としての収支を会計ソフトに入力しては、ため息をつき、今後どうするかを真剣に考えています。大学院の博士課程に学んで、学費や研究活動につぎ込んだお金は、数百万円単位に及び、加えて、論文のデータ収集や執筆のピーク時には、仕事を極力減らしたので、実際の数字以上のマイナスです。

 そうこうして、今年3月に学位をいただきましたが、学位をとったところで仕事が増えるわけではないという現実に直面し、心が折れそうになっています。ポスドク問題と言われてかなり経ちますが、正規の仕事が得られず自殺したオーバードクターの男性や、仏教研究者の女性の心情がうっすらわかる気がします。大学院に進むことを検討している人達は、本当によく考えてから決めてほしいと思います。博士の就職難は「自己責任」と言われる社会なんで・・・

 とはいえ、研究活動をしたからこそ得られた発表の機会もあります。9月と10月に開かれる学会やフェスタで、すでに日程が公開されているものを紹介します。

第11回日本ヘルスコミュニケーション学会 学術集会 
        2019年9月21日(土)・22日(日)
        東京大学 本郷キャンパス内  医学部1号館 1階・3階講堂  
    シンポジウム2  「文書を対象としたヘルスコミュニケーション研究(仮題)」 
            *シンポジストの1人として

第29回JTF翻訳祭 2019 
        2019年10月24日(木)  神奈川県横浜市(パシフィコ横浜)
    テーマ  新たなる時代の幕開け ~言葉のスペシャリストたちの新しい船出~
        プログラムの中の1つ 「メディカル翻訳の将来を考える」 
             *登壇者の1人として

それから6月より、国際医療福祉大学倫理審査統括委員会の委員を引き受けることになりました。年数回の不定期の集まりのようですが、これも博士論文を書いて、その内容が評価されたので、委員に推薦してくださったものと思っています。

 そういえば1週間ほど前に、製薬協の役員一覧と各社の会社概要の情報を使って、製薬会社の社長や会長宛てに、手元に残っていた学位論文を38社に郵送しました。丁寧な送り状を書き、「社長(会長)名」と「社員の皆様へ」は手書きにしました。送り状には、「本論文の後半には、ディオバン事件発覚後に設置された厚生労働省の検討委員会の委員8人への面接調査の内容が載っています。新旧のPMDA 理事長もインタビューに協力してくださいました。 また「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」の森嶌昭夫委員長は、インタビューサマリーを一字一句まで丁寧に直してくださいました」といったことも書きました。

 今のところ1社からも受け取りのメールさえ来ません。 完全スルーなのかしら…   
もしそうだとしたら、何とも空しい…を通り越して、ひとこと言いたい
          「つまんね~やつばっかりだな」

【追記】 昨日(6月19日)、これを書いて一晩寝たらスッキリしたので、今日からは上品に生きます!

国際共同試験のうち日本人サブグループの結果を報告する論文

6月4日に公開された論文紹介記事です。

Circ J誌から
エボロクマブの長期追跡でLDL-C低下効果の持続と安全性を確認
OSLERオープンラベルExtension試験の結果

Circ Jとは Circulation Journalの略で、日本循環器学会の英文誌です。エボロクマブは、最大耐用量のスタチンでもLDLコレステロール(LDL-C)値低下が不十分な場合に使える薬として登場しました。サブタイトルに、OSLERオープンラベルExtension試験とありますが、この試験までの経緯がすごく複雑でした。でも、論文中ではさらっと流してしまっていたので、色々調べて話をつなげるのにかなり時間がかかりました。

世界規模で実施された親試験としてFOURIER試験があり、その日本人サブグループはYUKAWA試験と名づけられました(2つグループあり)。FOURIER試験の続きで世界規模で実施されたのがOSLER試験で、日本人サブグループでも同じように試験を走らせたようです。その1年目はランダム化した期間であり(ここも2グループにわかれる)、そこはすでに報告済みのようで、本論文は主に2年目以降のオープンラベルの延長期間の結果について発表していました。

実際に試験に関わっている方々にとっては自明の流れなのでしょうが、いきなりこの論文から読むと経過を追うのが難しいですね。

p.s. アップした記事の本数が、ちょうど700本に達したようです。駄文も積もれば何かの役に立ってるんだろうか…